ここからメインコンテンツ

ユーザビリティ・コラム

ここからメインコンテンツ

第12回 安心感・動機付け・満足感(User Satisfaction)

このシリーズ最終回は「安心感・動機付け・満足感」について取り上げる。
「安心感・動機付け・満足感」といった、製品に対し好意的・魅力的な感情を抱いていると、それを使用する際にも肯定的な感情を持ち、問題解決力が高まる。逆に「不安・緊張」を与えるデザインはユーザーの思考プロセスを狭めてしまうこと(注意の狭窄)が以前より知られている。すなわち、ある製品やシステムを見てユーザーに「使ってみたい」と思わせる魅力的なデザインもユーザビリティー上重要なテーマである。ドナルド・A・ノーマンは著書「エモーショナル・デザイン 微笑を誘うモノたちのために」の中で、「製品が成功するためには、実用面よりも情動面のデザインの方が重要なのではないか」と述べている。今回はその情動面に着目し、・本能レベル(本能的デザイン)・・行動レベル(行動的デザイン)・・内省レベル(内省的デザイン)という3つの視点を用いて、製品やシステムに対してユーザーが持つ「安心感・動機付け・満足感」について考えてみる。

1. 本能的デザイン ─ 外観

腕時計や携帯電話など、毎日使うものや持ち歩くものを購入しようとしたとき、製品の外観を気にして選ぶだろう。場合によっては、買う予定はなかったが一目見て気に入ってしまい、思わず衝動買いしてしまうなんてこともあるかもしれない。本能的デザインは製品の外観から受ける第一印象に関わる。

外観が魅力的な携帯電話

図-1 au design project 「INFOBAR」

図-1 au design project 「INFOBAR」

図1の場合、「カジュアル」「おしゃれ」「かわいい」など、それまで携帯電話に対して感じたことがなかった印象や雰囲気、魅力がある。そして暗い場所でスイッチを入れるとボタンが光り、さらに魅力を与える。形はフラットで折りたたむものではないということが見ればすぐに分かる。ボタンはタイルのように大きく並んでおり、見やすくて押しやすそうである。手にしてみると薄くて軽く、持ち歩くのに負担にならないなど、外観から伝わる利用イメージが明確である。


2. 行動的デザイン ─ 使うときの喜びと効用

行動的デザインは、その製品がどんな機能を持っていてそれを使うと何ができるのか、そして使い方が理解しやすく操作しやすいかどうかという、機能・性能・使いやすさに関わる。

液晶部分を回転すると機能が起動する携帯電話

図-2 NTT DoCoMo FOMA P2102V

図-2 NTT DoCoMo FOMA P2102V

携帯電話で写真を撮るときはメニューからカメラを起動させるか、ハードウエア上にカメラボタンがあってそれを押して起動させる製品が多い。図2の場合は液晶部分を左図のように回転することでカメラモードに切り替わり、撮影ができるようになっている。ビデオカメラで撮影する際のポーズと似ており、自然である。


図-3 SoftBank 905SH

図-3 SoftBank 905SH

図3は携帯電話にテレビチューナーが内蔵されており、ユーザーにいつでもどこでもテレビを視聴することができるという経験を与えてくれる。そして液晶部分の向きを変えるとモードが切り替わり、横向きに回転させるという簡単な行為は誰でもすぐに理解ができる。一度で覚えることができ、それ以上の説明は必要ない。また、とくに大きな力をかけずに回転してしまうことに驚きと喜びが生まれる。このような液晶の動きはこれまでに見たことがなく、新しい機能を形から表しており、使ってみたいという動機付けにもつながる。


3. 内省的デザイン ─ 自己イメージ、個人的満足感、想い出

これまでに挙げた本能的デザイン・行動的デザインは、製品を手に取ったときに感じる第一印象や使い始めるときに製品から伝わる操作の分かりやすさに関わる。内省的デザインは、使っていくうちに製品の機能や使い勝手の良さをさらに理解し、それを使いこなせるようになってきた段階で感じてくる製品への愛着や満足感に関わる。

使っていくうちに製品の良さを知り、満足感を得る

図-4 NTT DoCoMo FOMA N702iD

図-4 NTT DoCoMo FOMA N702iD

図4は携帯電話の外側についている液晶で日時やメール、ニュースの自動配信などを見ることができる。携帯電話を毎回開かずに閉じたままの状態でそれらの情報を確認できるので、しばらく使っているうちにこの液晶の持つ機能と良さを受け取れることができる。



図-5 Apple Computer iPod

図-5 Apple Computer iPod

iPodは平面上には操作ボタンらしいものは真ん中にある円の部分しか見当たらない(図5)。初めて手にしたとき、電源の入れ方すら分からず、電源ボタンを探してしまうかもしれない。使い始めはこれだけのボタンでどうやって操作をしたらよいのかわかりにくい印象を与える。しかし使い慣れると2つの操作部分だけで再生・停止・選曲など何千曲もの音楽データを操作するのに十分な役割を果たしており、操作効率が良いということに気づく。またシンプルな操作構造は、操作間違えに対する不安も少なく、積極的にいろいろな機能を試しても大丈夫だろうという安心感につながる。



以下にガイドラインを記載する。

デザイン・設計ガイドライン

  • (1)システムを使ってみたいと思わせる工夫がされていること
  • (2)難しそうでなく、簡単そうなイメージをユーザーに与えること
  • (3)一般的な機能と専門的な機能の区分けがはっきり分かるようにデザインする
  • (4)実際に操作は簡単であり、ユーザーの期待を裏切らないこと

参考文献:

ドナルド・A・ノーマン著、岡本明、安村通晃、伊賀聡一郎・上野晶子訳:

エモーショナル・デザイン 微笑を誘うモノたちのために;新曜社(2004)